MagliaRosa

Maglia Rosa(マリア・ローザ)。
自転車レースを見る人なら聞いたことがある言葉。イタリア最大かつ世界でも3大ロードレスのひとつである「ジロ・デ・イタリア」(Gilo d’italia:以後ジロと表記)の、総合優勝者に与えられる特別なジャージの名前。

ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャと並んでグランツールと呼ばれるジロ。
北半球の殆どが新緑に覆われる5月のはじめにスタートし、以後3週間に渡り長く過酷なレースが繰り広げられる。
世界最大のレースがツール・ド・フランスであるなら、ジロは「世界で最も美しいレース」と言われる。

僕が自転車を始めたきっかけは、ジロを見たこと(もちろんテレビでね)。
眼の前で展開される熱いレースとは裏腹に、汗まみれになり必死にもがく選手たちを囲む自然は壮大で、全てのものを包み込む優しさにあふれていた。
過酷なレースと美しい自然との強烈なコントラスト。
そのコントラストを見事なまでにリンクさせていたのがピンク色に包まれたリーダージャージ。
サイクルロードレースという非日常と、常にそこに存在している自然。
この2つを「ピンク」という非日常のアクセントカラーを身にまとった選手が、コントラストの中間で絶妙なタッチポイントとなっていた。

自らの力で遠くへ、速く。
数千メートルもある山を、自分の力を自転車に伝え、できる限り速く登っていく。
日々の忙しさに疲れて、心がささくれだっていても、すべてを許容してくれる大自然がそこに待っている。
すべてを忘れ、とにかくペダルを回す。
息は上がり、心臓は破裂しそうなほどポンプする。
とても辛いのに、何故かすごく楽しい。
ジロが体現していた魅力を追体験し、自転車の楽しさを理解するまでに、そう多くの時間は不必要だった。

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