ついに、ついにCervélo R5 DISCがカーボンドライジャパンの補修から戻ってきました。もう乗りたくてウズウズしている。
日曜日は雨予報、なんとか土曜日にはテストを兼ねて乗りたいなと思い、早速組み始めます。
バラ完に近い手続きとなったので、何かの誰かの参考になるかと思い、メモを残しておきます。
これまでの過程はこちらの記事をご参照お願いします。
フレーム単体でカーボン補修に出すため車体をバラす
ちょうど組み終わって1年2ヶ月、そろそろオーバーホールをかねてバラしてもよいタイミングにフレームを補修することになりました。今回のバラシはこんな感じ。
- ハンドル:ポジションを変えないように、ステムとハンドルは固定したまま取り外す。バーテープはちょいちょい変えているし、その都度STIレバーも微調整しているのでそのまま。ハンドル内を内装したブレーキケーブル、Di2ケーブルはぶっっちゃけ二度と触りたくないwwので、交換のタイミングまではそのまま
- ブレーキ:残念ながらホースをカットしないとハンドル全体を取り外せないので、キャリパーに近い位置ギリギリでカット。おそらく次の組み付けでも長さは足りているはず
- フォーク:ブレーキキャリパー、スルーアクスルの受けとなるフォークインサートを取り外し全バラし
- フレーム:こちらはカーボンドライジャパンに送るため完全バラし。エンドも取り外して、フロントディレーラー台座は補修に関係しない位置にあるため取り付けたまま送る
- 駆動系:クランクとチェーンリングは取り外して徹底清掃。再度組み付けし、トルク管理。リアディレーラーも取り外して清掃。RIDEAのビッグプーリーも取り外してベアリング周りを清掃
- BB:使っているのはTokenのNINJA BB、ベアリングがセラミックタイプのもの。これも取り外して清掃。ベアリングはシールドベアリングのため、分解せずにそのまま。シールドベアリングは分解掃除があんまり推奨されていないしね
というわけで、ハンドル以外はほぼ全バラしの状態です。
さっそく修理が完了したフレームに組み付けていく
では早速組み付けていきましょう。
どこから組んでいくかは悩ましいところですが、フレーム単体の状況だとフレームをクランプして固定する作業台しか使えません。トルクを欠ける作業などでは、この作業台だと力が逃げてしまって使いにくいことがあります。ので、まずはフォークの固定をハンドルの仮組みから行っていきます。

フォークの固定とヘッドパーツの取り付け
組み付けの前に、なかなかパーツの状態での重量計測はできないので、再度実施しておきました。
まずはフォーク。むろん、コラムも含めてフルカーボンのフォークです。重量は322g。40mmスタックのコラム+2mmと5mmのコラムスペーサーでちょうどよい長さにコラムカットをした後の重量になるので、長目に残している方はこの限りではないかと思います。

続いてフォークインサート。2019年モデルのCervélo R5 DISCは、デフォルトはFOCUSが提唱したRAT (RAPID AXLE TECHNOLOGY)採用のものがデフォルトで付属しているのですが、2020年あたりから通常のボルトスルーのアクスルに変更となっています。RATは便利なんですが、重量もあるし、400km/600kmブルベではホイールのアクスル軸に装着するタイプのライトマウントを使いたかったので、別売りのフォークインサートとエアロスルーアクスルを購入して、最新の仕様に変更しています。
そのフォークインサートの重量は5g。

エアロスルーアクスルの重量は29g。軽いですね。ちなみに適合するフロント用スルーアクスルは、長さ127mm、スレッドピッチP1.5のものが適合しますので、サードパーティー製も含めて考えている方はご参考まで。

フレームをひっくり返し、下のヘッドパーツが入る部分を入念にグリスアップ。その上で、下ベアリングを入れ、そのベアリング自体もグリスアップします。グリスが接着剤の役割も果たしてくれるのか、このままひっくり返してもヘッドパーツが墜ちてくることはありません。

フォークのヘッドパーツが接触する部分にもグリスを入れます。多すぎない程度に多く入れるのがポイント。

フレームを再度反転させ、下からフォークを挿入。下部と同様、フレームのヘッドパーツ受けとヘッドパーツ自体も入念にグリスアップした上で、フォークの落下防止を防ぐためにヘッドパーツカバーを装着します。Cervélo R5のヘッドパーツカバーはOリングが入っていてぴったりとフィットしてくれるため、フォークがすっぽ抜けることがなくなります。これは楽。
この時点で、コラムにはカーボンアッセンブリーペーストを塗ってあります。

コラムスペーサーを適量入れたら、ハンドルを付けっぱなしのステムを挿入し、プレッシャーアンカーを入れ、仮固定します。このあたりは最後の段階でハンドルのガタ取りや角度調整をするので、あくまで仮で固定ですね。

ちなみに、Cervélo純正のプレッシャーアンカーは、10gとめちゃくちゃ軽いんですが、エポキシ樹脂で接着するタイプの者なので、一度やってしまうと後戻りができない。もう少しハンドルを下げる可能性があるため、取り外しが可能で調べた限りでかなり軽い部類に入るスペシャライズド純正のモノを使っています。これまで入手してきたものはだいたい40gほどあるのですが、スペシャ純正のものは28gと軽い。新宿のスペシャライズドストアで購入しましたよ。

あとはトップキャップを仮固定して、フォークの仮固定は完了です。
今回の組み直しに合わせて、シマノ純正のグリスガンを用意しました。これまではボトルタイプのモノを使っていたのですが、チューブタイプ+グリスガンで作業性がかなり上がった印象です。
カーボンアッセンブリーペーストは、モーガンブルーのものを愛用。なんだかこれ、一生使い切らない量が入ってます。


意外と山場:ブレーキホースとDi2ケーブルの内装
地味なくせにやたらと時間がかかるのが、ブレーキホースとDi2ケーブルの内装。順番的には、ケーブルが堅く取り回しの悪いブレーキホースから内装していくといいかと思います。
その際の秘密兵器となるのが、これ。JAGWIREのケーブル内装ツール「Jagwire PRO INTERNAL ROUTING TOOL」と、電子工作用のツール「goot(グット) ソルダーアシスト」のうちの一本です。前者はケーブルをマグネットで誘導して、小さな穴から取り出す際に引っかけるために後者のツールを使っています。

画像中央の銀色のパーツ、左がDi2ケーブルのソケットに収まるもの、右がブレーキホースの内径にはまるものになっています。これがマグネットに吸着する素材でできており、フレーム内に挿入した後マグネットで誘導していきます。

まあ、言うのは簡単なんですが、なんだかんだ思い通りに行かずに時間がかかるんですよね、この作業。フロントフォークの途中の穴からフロントブレーキのブレーキホースを出し、フロント側は終了。
リアがやっかいで、一度BB下の穴までブレーキホース、Di2ケーブルの両方を誘導して出しておきます。ちなみにこの時点で、シートチューブ内、チェーンステー内にもDi2ケーブルを回しておき、それぞれの穴とBB下の穴にコネクタを出しておき、マスキングテープで借り固定しておきました。
Cervélo R5は軽量フレームで、カーボンの材質が堅く薄い。そのせいもあってか、走っている最中にブレーキホースがフレーム内部で遊び、ヒットするたびに「パチンっ」という精神衛生上よろしくない音がするのが気になっていました。
そのため今回は新兵器として、アウターケーブルヒッティングプロテクターという代物を用意。簡単に言うと、ブレーキホースを中に通すことができるようになっている柔らかいゴム。これをダウンチューブのブレーキホース周りに施工しました。
一度使ったブレーキホースはある程度クセが付いているので、このゴムを通していく作業がホント地味。ブレーキホースのクセを意識しながら力の入れ具合を変え、なんとか取り付けました。適当な長さで11gとそれなりの重量がありますが、あの「パチンっ」という音が消えてくれるのであれば問題ありません。




ブレーキホースとブレーキキャリパーの接続
ブレーキホースのルーティングが終わったら、ブレーキキャリパーとホースとを接続していきます。まずはフォークにブレーキキャリパーを固定。

ブレーキホースの長さは、組んだものを外しただけですので、今回はなし。全バラしするためにはホースをカットする必要があるので、初回の組み付けでは2cmほど長目に組み付けておくと、ホースの再利用が可能になるのでオススメです。
ブレーキホースとキャリパーの接続は
- ホースにコネクタインサートを取り付ける
- コネクティングボルト、オリーブをホースに通す
- コネクティングボルトでキャリパーに固定していく
という手順です。この手順の中でオリーブは潰れて密閉する役割を担っているので、再利用は不可。新たに前後ともに調達しておきました。
使っているツールはTEKTROのもの。ホースのカットとコネクタインサートの取り付けが一つのツールで対応可能です。
もちろん、SHIMANO純正の方がいいんだろうけどさ、高すぎなのよ。穴にホースを通し、TEKTROロゴ横のボルトをギッチギチに締めるとホースが固定され、手で入るところまでコネクトインサートを入れたら、あとはレバーを握ると圧入が完了します。


コネクトインサートを圧入が完了したら、コネクトボルト、オリーブを通しておきます。

ホースが底付するまで垂直にキャリパーに刺した後、オリーブをキャリパー内に埋め込む感じで、8mmスパナでコネクトボルトを締めていきます。ここのトルクはいつもよくわからないのだけれど、回せなくなるぐらいまで回していきます。スレッドが全部見えなくなる形にはならず、だいたい半分ぐらいまで占めると回らなくなる感じ。

リアも同様に作業すれば、ブレーキホースとキャリパーの接続は完了。リアの場合、横向きに接続するかたちになるので、作業台の角度を変えるなどして、やりやすいポジションで作業することをオススメします。
BBとクランクの取り付け
次はBBとクランクの取り付け。BBはTOKENのNINJA BBというシリーズのスレッドフィットでセラミックベアリング仕様 (TBT仕様)のものを使っています。このタイプのBBを取り付けるには専用工具が必要。ParkToolだとBT-27.2で、カップ外径48.5mm/16ノッチベアリングカップの工具が適合します。

(写真がブレブレですいません…)まずは工具を使わず、手で回るところまで左右のワンを回していきます。ああ、フレームと接触する部分、および左右のワンが結合するスレッドにはグリスアップをお忘れなく。

手で回らないところまで来たら、工具を使って締め付けていきます。TOKENの純正工具は、9.5mm角(3/8″sq)のトルクレンチに対応しています。こうすれば高トルクのBBでもしっかりとトルク管理ができて安心です。

規定トルクで締め込んだら、クランク軸を薄くグリスアップし、クランクをBBに差し込みます。反ドライブサイドには BB付属のワッシャが2枚必要になるのでお忘れなく。

クランク軸、左クランクの接合部分、クランクキャップボルトを適宜グリスアップし、左クランクを装着すればBB周りの組み付けは完了。
フロントディレーラーを仮固定
クランクの取り付けが完了したら、フロントディレーラーを固定します。ぼくはROTORの楕円チェーンリングを愛用しているため、どうしてもフロントの変速調整はシビアになります。最終段階でこれを詰めに詰めていくことになるので、この時点ではとにかく仮固定です。
楕円チェーンリングの場合、最大の歯数になるところ(クランクが3時・9時)でFDの位置決めをし、歯から1〜2mm以内のところで固定します。

リアディレーラーの取り付け
フロントフォークと同様、ボルトスルーのアクスルに変更する際には、リアディレーラーハンガーも変更する必要があります。R5のディレーラーハンガーは、二つの大きな部品でフレーム側の穴を挟み込むような形状をしています。故に17gとけっこう重量がありますね。

スルーアクスル自体は、37gと軽量。クイックリリースの軽量タイプは前後でだいたい50〜60gぐらいの重さですから、スルーアクスルになって剛性が高くなる上で重量増がないのはとってもいいこと。

こんな感じで、リアディレーラーハンガーを取り付けます。この外側のパーツ自体がナットのような役割を持っていて、これをモンキーレンチで締めつけるわけです。

ディレーラーハンガーを付けたら、リアディレーラーを取り付けます。アーレンキーで締め付けるだけなので簡単。終わったらDi2のケーブルをディレーラーに接続しておきます。
最後に、BB下から出てきているDi2ケーブル4本(ハンドル周りから・シートポストから・フロントディレーラーから・リアディレーラーから、の合計4本)をジャンクションBで接続し、これをBBしたの隙間に埋め込みます。プラスチックのパーツなので、音鳴りがしないよう、プチプチなどで軽く包んでおくとよいかと。
ブリーディングとピストン清掃
これで外観はほぼほぼ完成しています。あとはブレーキオイルのブリーディングやチェーンを張っての変速調整です。まずはブリーディングから。
ブリーディングには専用の工具が必要。写真はSHIMANO純正のブリーディングキット(旧型)。これがまあ、控えめに言ってもクソww。CXバイク用にSRAMのブリーディングキットも持っていますが、SRAMを100点としたら、SHIMANOは3点ぐらいww、それぐらい酷い。
まあ、SHIMANOはこぼれたとしても攻撃性が低いミネラルオイル、SRAMはこぼしたりしたらいろいろ問題があるDOTオイル。そんな差が影響しているのだろうけど、とにかくおおらかすぎる。オイルをシリンジに吸い上げた後にエア抜きする機構がないし、キャリパーとシリンジとを接続するチューブなんかただのチューブで何の工夫もない。結果、オイルをビタビタ垂らしながら作業するのがデフォになっちゃう。
まあ、改良されたバージョン(シマノ TL-BR プロフェッショナルブリードキット)が出ているようなので、そちらを使ったほうがよりよいことは間違いないかと。写真を見る限りは、漏斗が2つになってファンネルアダプタが不要になったり、チューブの先端、キャリパーに接続する側にパーツが付いたりと、かなり改良されている予感がします。


今回は、多少のオイル抜けはあったものの、ホース側にもキャリパー側にもある程度のオイルが残っている状態で作業をスタートさせています。細かなやり方はググってもらえればいくらでもコツが書いてありますから割愛しますが、全体的には以下のように進めていきます。
- レバー側のブリーディングボルトを外して、漏斗とファンネルアダプターを装着
- レバー側のシマノロゴが水平になるようにバイクの角度を変える
- キャリパーのブリーディングポートに7mmのメガネレンチを掛けておく
- ブリーディングポートに、シリンジにオイルを満たした状態で接続
- ブリーディングボルトを開け、シリンジからオイルを注入していく(この際シリンジを垂直に位置させ、シリンジからエアを送り込まないように注意)
- 漏斗の半分ぐらいがオイルで満たされるぐらいまでシリンジからオイルを入れていく
- 入ったら一度ブリーディングポートを閉め、レバーを数回握って一瞬ポートを空ける作業を繰り返す
- ポートを再度閉じ、車体の角度を変えてレバーをニギニギ。漏斗の中に空気が出なくなるまでエア抜きする
といった感じ。
ブリーディングが終わったら、念のためピストンを清掃・オイルアップしておきます。
ブリーディングブロックを外し、パッドがない状態でレバーを握り、ピストンを少しずつ出していきます。だいたい、左右均等には出ないので、出過ぎたピストンはピストン戻しを使いつつ、左右のピストンが同量出てくるぐらいまで露出させます。
露出したピストンを、イソプロピルアルコールを含ませた綿棒で掃除した後、同じく綿棒を使ってシリコンオイルを塗り込んでおきます。こうして清掃・潤滑しておくことで、左右のピストンの稼働量が同じくらいになり、ディスクブレーキ特有のローターとパッドとの干渉によるシャリシャリ感が起きる可能性を低くできます。

ちなみにこの作業で使うイソプロピルアルコールは、SRAMのドキュメントでも推奨されているケミカルで、ディスクブレーキ周りの脱脂には大活躍します。油圧ディスクブレーキ周りをよくメンテする人は、持っていて損はないケミカルです。

チェーンを張って、変速調整
最後、チェーンを張って変速調整をします。まあ今回は整備された状態でバラしからのくみ上げなので、ほとんど前の状態が残っています。Di2のインデックス調整も不要でしたが、例のごとくフロントディレーラーの位置決めはシビアに追い込みました。
組み上げてテストライド
そんなこんなで約1日、組み上げと調整した後、やはり仕上がりは走らんと分からん、ということでテストライドへ。
コースはホームコースとも言える多摩湖サイクリングロードからの多摩湖一周。結果、FDの調整はまだ少し追い込める余地はあるものの、それ以外はほとんど問題はありませんでした。
多摩湖一周のサイクリングロードは、路面が荒れているところがあるのですが、それでもブレーキホースがフレームの内部でヒットするような音もなし。あのゴムはいい仕事をしてくれているようです。

いや、それにしても秋になりましたね。ぼくの住んでいる多摩北部でもチラホラとオレンジ〜赤の色彩になってきました。SONYのフルサイズミラーレス・α7 III+FE 100mm F2.8 STF GM OSSを持ち出してパシャパシャしたので、最近の東京の季節感を感じられる写真をいくつか貼り付け、このエントリを締めたいと思います。




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