【ウェアインプレ】Rapha・プロチーム ロングスリーブ GORE-TEX インフィニアム ジャージ レビュー

だんだんと寒くなってきたので、久々に冬物ウェアを買いました。Raphaの新製品、GORE TEXの INFINIUM™ WINDSTOPPERを採用したジャージ、「プロチーム ロングスリーブ GORE-TEX インフィニアム ジャージ」です。

©Rapha Racing Limited 2022
目次

前提1: 防水じゃないよ、防風だよ

まず最初に記載しておきたいのは、この「プロチーム ロングスリーブ GORE-TEX インフィニアム ジャージ」、防水ジャージでありません。あくまで「防風」にフォーカスしたウェアです。

GORE TEXというと「防水」というイメージが強いかもしれません。実際、同社の売りは防水性と透湿性を高いレベルで同一させた生地素材です。このに採用されている生地「GORE TEX INFINIUM™ WINDSTOPPER」は、防水性よりも快適性とパフォーマンスを優先する目的で開発された、防風性と透湿性にフォーカスした生地です。

とはいえ、後述しますが、このウェア、一般的なジャージと比較すれば、遙かに高い撥水性は備えています。ので、ちょっとした軽い雨程度ならしのげてしまうのも事実。あくまで防水ではないが、高いレベルでの撥水性は備えていると言って差し支えないかと思います。

前提2: ジャケットじゃないよ、ジャージだよ

数多くのメーカーがをGORE TEX素材を採用したウェアをラインアップしています。その多くがシェルと呼ばれる、大気に触れるアウターレイヤー=ジャケットとなっています。

が、この「プロチーム ロングスリーブ GORE-TEX インフィニアム ジャージ」、名前の通りジャケットではありません。ジャージなんですよ。サイクルスポーツ用の冬用ジャケット、防風性を担保するためのメンブレン膜に加え、保温機能を高めるために裏起毛になっていたりと、どうしても生地が厚くなってしまい、ごわついてしまう作りをしています。

軽く柔らかい素材でありながら、寒い時期でもアウターとして使えるジャージ、そんな特徴を持つのが「プロチーム ロングスリーブ GORE-TEX インフィニアム ジャージ」なんです。

ほしいと思った動機とぼくなりの冬用ウェアのチョイス

発表されたときから気になっていたプロダクトではありました。ちなみに以下、ぼくのスペックです。

  • 身長:174cm
  • 体重:60kg
  • 胸囲:91cm
  • ウェスト:76cm

だいたいのRaphaのプロダクトは、Sサイズがジャストです。が、GORE TEX INFINIUM™ WINDSTOPPERという特殊な生地を採用しているため、サイクルジャージと比べて伸縮性が低く、どのような着方をするかによってサイジングが異なるようなのです。

ぼくの冬用ウェアの理想は、インナー+アウターでシンプルに構成したい、というもの。「サイクリングウェアで冬を乗り切るには重ね着がポイント!」とよく言われるのですが、あんまり何枚も重ね着したくないんですよね。できればベースレイヤー+ジャケットで済ませて、汗の調節などはジャケットのジッパーを開け閉めしてコントロール。寒い場合にウインドシェルかジレを追加、ぐらいですませたい。

ちなみにこの2シーズンぐらいは、

  • ベースレイヤー:メリノメッシュベースレイヤー、メリノベースレイヤー、サーマルベースレイヤーを気温によってチョイス。厳冬期はプロチームベースレイヤーやファイントラックのメッシュベースレイヤーを一番下に着る
  • アウターレイヤー: プロチーム インサレーティッド ジャケット
  • ライド中に寒いときだけ:ジレもしくはウインドブレーカー

という着回しが最も多かったです。実質的に、アウターレイヤーがプロチームインシュレーテッドジャケット一択になってしまっていたので、今回発売された「プロチーム ロングスリーブ GORE-TEX インフィニアム ジャージ」は、第二のアウターレイヤーになるのでは?と期待していたのです。

フィッティング

RCCのライドに参加していれば、自然とメンバーのウェアインプレなども聞けるのですが、あいにく最近まで肋骨が折れていてフィジカルも最低レベル。とてもグループで走ることができる状態ではありませんでした。が、Raphaのinstagramで公開されているオンラインプロダクトレビューやRCCメンバーのポストから、チラホラと情報が入ってきました。要約すると、要試着!ということ。

ので、ブラックフライデーセールのまっただ中、Rapha Tokyoに行って試着してみました。

  • いつものSサイズ:腕周り、腕の長さ、およびジャージのジッパーが閉まるウェストあたりはいつも通りのフィット。ただし、胸回りがジャストフィット過ぎて、ベースレイヤーの重ね着の余裕が少ない感じ。普通のジャージであれば、生地自体の伸縮性でカバーできるのですが、それが効かない感じ
  • ワンサイズ上のMサイズ:胸回り、腹回りは若干余裕もちだがギリギリフィットしている感じ。ただ、腕周りと袖の長さが少し余裕がありすぎる状態

というフィッティングで、何度も何度も試着してどうしようか悩みました。たぶん、都合5回ぐらい着脱を繰り返したと思う。

散々悩んだあげく、結局ワンサイズ上げてMサイズにしました。
理由は、

• 腕周りの余裕が気になるが、厚手のベースレイヤーを着たときにはあまりに気にならないかもしれない
• ベースレイヤー重ね着をするのであれば、胸回りにMサイズぐらいの余裕がほしい(それだけジャージと比べて伸びない素材を使っている)
• ワンサイズ上げても、ポケットにいっぱい物を詰め込んでも、ジャージが下に伸びてだらしなくなるような生地感ではない
• Sサイズはジャストフィット過ぎて、ジャージのポケットからものを取り出しにくい

ということでした。

このプロダクト、試着はちゃんとした方がいいですよ。
Raphaのショップから遠い場合は、通常サイズとワンサイズ上を取り寄せて、納得いくまで試着した上でどちらかを返品する、ぐらいの勢いで考えたほうがよさげです。

ブラックフライデー対象外の製品のため、お値段は、ハイ36,000円!た、高い…。

プロダクトの細部を見ていくよ

ではさっそく、「プロチーム ロングスリーブ GORE-TEX インフィニアム ジャージ」の細部を見ていきましょう。

GORE TEXでは黒い菱形のタグ(ブラックダイヤモンド)が有名ですが、INFINIUM™ WINDSTOPPERはホワイトダイヤモンドですね。

INFINIUM™ WINDSTOPPER=ホワイトダイヤモンド
INFINIUM™ WINDSTOPPER=ホワイトダイヤモンド

襟はかなり高め。意外とこれが風のシャットアウトには重要だったりします。写真では白に見えますが、胸元のストライプは反射素材の銀色です。

首回り
首回り

GORE社製品によくある、グレーの裏地ですね。何度も言うようですがシェルやジャケットの類いではなく、あくまでジャージなので、肌触りの優しい裏地もついています。
また、生地のつなぎ目にもシールがしてあり、「通したらいかんもんは徹底的に通さん」って感じで仕上げてあります。

優しい肌触りの裏地とつなぎ目のシールテープ
優しい肌触りの裏地とつなぎ目のシールテープ

しつこいようですがジャージなので、ダブルジッパーではないです。
左側にはRaphaプロチームシリーズのアイコンともなっている「路上の囚人 (FORCATS DE LA ROUTE)」を示す監獄マークがリフレクティブ素材で。
写真では見づらいかもしれませんが、この監獄マークの少し下あたりで生地が切り返しになっており、この部分は高伸縮性の素材で(たぶん)GORE TEX INFINIUM™ WINDSTOPPERメンブレンは付いていないと思います。

ダブルジッパーではない。ウェスト周りは高伸縮性の素材を採用
ダブルジッパーではない。ウェスト周りは高伸縮性の素材を採用

シークレットメッセージもいつものRapha。

The First Line Of Attack and The Last Line of Defense
攻撃の最前線、防衛の最後列

The First Line Of Attack and The Last Line of Defense
The First Line Of Attack and The Last Line of Defense

脇はウェスト部分とほぼ同じ素材で、通気性を高めて熱がこもらないようにしていますね。
脇の下って意外と熱がこもるので。

脇の下は伸縮性&通気性のある素材で熱がこもらない仕組みに
脇の下は伸縮性&通気性のある素材で熱がこもらない仕組みに

脇の下、ウェスト部分と同じ高伸縮性生地がポケットにも採用されています。
高伸縮なのは、このジャージの”メインファブリックと比べて”なので、普通のジャージよりもポケットの内容量は稼げないかも。ジッパー付きのポケットもありません。
テール部には大きめのRAPHAのロゴがあり、反射で目立ちそう。

ポケットは伸縮性のある生地で構成
ポケットは伸縮性のある生地で構成

実走インプレッション・レビュー

実際に着て走ってきました。

Raphaのプレステージでグループを組んでいた仲間と「野点珈琲&パンライド」を企画していましたが、前日の予報はあえなく雨となり、グループライドは中止。
ルートを担当したぼくも、急に決まったライドだったので地図を見ながら適当に「えいやっ」と引いたルートだったので、多少の雨は覚悟して、一人で試走に行きました。

国分寺をスタートして、多摩湖へ北上。トトロの舞台ともなった都立八国山公園のグラベルを経て北東に向かい、途中埼玉県志木市あたりでランチ用のパンなどを仕入れつつ、荒川沿いの彩湖でおのおの持ち寄った珈琲を野点でドリップして飲む。
最後は南下して矢野口ゴール、というまあいわゆるグルメゆるポタライドです。

スタート時点の気温は10度で、最高気温は15度の予定。風は微風(1〜3mあたり)ぐらいで、防風性を極限まで試せるコンディションではなかったです。が、まあ走ればそれなりに空気抵抗が生まれるので、普通のジャージであればこの時点でウェア内に空気がガンガン入ってくることを感じるでしょう。

この日の装備は

要は、今回レビューするジャージの下には夏用のベースレイヤーしか着ていない状態(ビブは冬用の裏起毛のタイプですがね)。ウェアを選んでいる段階で「さすがにちょっと寒いんじゃね?」と思いつつも、「まあいいか」と思いこの格好で出かけました。

で、結局どうだったのよ?

結論から言うと、防風性は抜群です。スタート直後、気温10度の状態では、脇の下の通気性のよい素材のあたりから少し寒さを感じるものの、10分ほど少し強めに踏めば寒さを感じることはほぼありませんでした。
「ちょっと寒いんじゃね?」と思ってジレを羽織りましたが、一日中ジレのジッパーを上げることはありませんでした。

基本的に市街地・住宅街の走行でしたのであまりペースを上げられなかったのですが、道路状況が許すところでは40kmぐらいまでスピードを上げてみました。この速度域だと、通常のジャージでは風を浴びている感がいっぱいになるのですが、「ジャージを着ているのにシェルで風から守られている」ような安心感
だいたい300W〜350Wで踏んでいて、うっすら汗をかきましたが、その湿気がジャージにたまっている不快感はゼロ。噂通り、防風性と透湿性には優れているようですね。

ただ、気をつけてほしいのは、ジャージ自体に保温性はないという点。通常の冬用ジャージであれば、ジャージ自体が身体から発する熱を保存するような仕組みになっているのですが、GORE TEX INFINIUM™ WINDSTOPPER素材は風を通さないものの、生地自体は風を浴びて冷やされています。今回のように夏用のベースレイヤー一枚だと、身体とジャージの間に保温膜を作ることができず、寒さを感じてしまうのです。

走っているときは身体が温まっているため、その防風性ゆえ、その熱が風で抜けすぎない程度に保温してくれるんですが、休憩中は少し寒さを感じるシーンがありました。つまり、保温膜はベースレイヤーで作ってやる必要があると言うこと。

ヒルクライムのように長時間強度が上がり続けるようなシーンでは、ジッパーを下げてベースレイヤーに直接風が当たるようにしてやることで、温度調整はできるんじゃないかな。

あと、防水性はなく、あくまで撥水とのことですが、水への耐性は普通の冬用ジャージの比較にならないほど高いです。写真はスタート後しばらく降っていた雨を浴びながら走っているときです。
ジャージに吸収されることなく、しずくとなってジャージ表面に固まっています。この状態で腕を振ると、しずくはサクッと消えてくれます。

浴びた雨を吸収せず、しずくになって固まる
浴びた雨を吸収せず、しずくになって固まる

まあ、降水量は1mmにも満たない状況ですので、どこまでこの状態をキープできるのかが防水性の基準なんでしょうが、普通のジャージであれば、雨を浴びたらそれをそのまま吸収してしまいます。ジャージとしては十分すぎる耐水性を持つと言えるんじゃないでしょうか。

レビューまとめ

それでは「プロチーム ロングスリーブ GORE-TEX インフィニアム ジャージ」のレビューをまとめます。
まずは利点。

• 防風性はかなり高い。ジャージ1枚でウインドシェルを着ているかのような安心感
• ジャケットではないので生地が柔らかくごわつかない
• 透湿性も申し分なし(ただし普通のジャージと比較すればもちろん落ちるので、ジッパーの開け閉めは頻繁にね)
• ジャージ単体としては他を凌駕する耐水性。ウインドブレーカーと同等の耐水性はあるのでは?

そして欠点です。

• やっぱ36,000円は高いよね…
• ポケットの積載量はジャージよりも若干低め
• フィッティングが難しい
•  保温性は低いのでベースレイヤーを工夫しようね

総体的に、値段以外は満足です。いや、値段もまあ、ジャージとウインドシェルを二つ買うと考えるとむしろ安いのか。

ポイントとしては、シンプルなレイヤリングをしたい冬用のウェアを探している人には適切なジャージ、ということになると思います。

インプレを行ったライドのログ

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