Panaracer AGILEST TLR 30c インプレッション

Panaracer AGILEST TLR

先日出た西上州300kmのブルベでは、タイヤを新調して走りました。新調したタイヤは、Panaracerの最新作、AGILEST TLR (チューブレスレディー) 30cです。

Panaracer AGILEST TLR
Panaracer AGILEST TLR
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「太タイヤ+空気圧下げ」のススメ

ナローリム+クリンチャータイヤをメインにしていた頃は、ご多分に漏れず、23cで空気圧を7Barまで上げてカッチカチでした。ぶっちゃけ、ロードバイクってそういうもんだと思ってたし、空気圧の調整は雨の日以外はほとんどしていませんでした。

が、とあるライドでタイヤサイドカット+チューブ&パッチを使い果たしてしまい、なんとかリムで走って駆け込んだ飯能のロードバイクショップで、「もっとタイヤの空気圧下げた方がいいよ。みたところ体重60kgぐらいでしょ、なら6Barぐらいで全然オッケー」(意訳)とアドバイスを受け、下げて乗ってみました。するとびっくり、空気圧を下げるだけで乗り味が全然違う。何か新しい世界が広がった気がしました(ちなみにこのときに偶然入ったショップさんが、シクロクロスなどにもよく参加されているサイクルハウスMIKAMIさんでした)。「タイヤが固いと速い」と信じ込んでいましたが、固いと路面に追従せずに跳ねしまうため、力を無駄に使うことになるということを身を以てわかった感じでしたね。

その後は、乗り味ごこちと少ないパワーロス(=楽に速く)を求めて、さまざまなタイヤを試すようになりました。チューブレスレディに対応したReynolds Assault 41をメインホイールに据えた時点で、より空気圧を下げることができるTLRへの移行も積極的に進めていきました。

いまでは時代が変わり、15mmのナローリムがメインだった時代から17mmを経て19mmになり、最近ではロード用でも内径21mmのリムなんてのも珍しくありません。タイヤの太さも、23cが標準だった時代が25cが標準になり、ロードの完成車で32cを履いているものもあったりします。新しい機材を売りつけたい業界の思惑、なんて穿った見方もあるかもしれませんが、これだけ進んでいるということは、僕が感じたように、タイヤの太さと空気圧設定がロードバイクにとってはとても重要で、その結果タイヤを太くして空気圧を下げる方が乗り心地・速さの観点からも良い、ということなのでしょう。

そういう経緯もあり、Cervelo R5 DISCを組むにあたって、28c以上のタイヤを使うことを前提に考えていました。太いタイヤはどうしても重量が重くなってしまいますが、クリンチャータイヤ+普通チューブ(80g~100g程度)の重量を鑑み、250~260g程度の重量であれば許容範囲として、28cのチューブレスレディタイヤを探し、IRCのFORMULA PRO TUBELESS READY S-LIGHTの28cを初期装備として選びました。

FORMULA PRO TUBELESS READY S-LIGHT

FORMULA PRO TLR S-LIGHTで2,000km以上走る

FORMULA PRO TLR S-LIGHT 28cを入れてからも、いろいろな空気圧を試し、おおよそ5Bar程度が自分にとってベストであるという結論に至りました。4.5Barまで下げると、荒れた路面からの衝撃が減る反面、少しもっさりとした感じになり反応性が低下、特にヒルクライムでは少し影響があるように感じました。その一方、5.5Barまで上げてしまうとロードノイズを拾いすぎてあまり気持ちよくない。そのため、走るコースによって4.8Barから5.2Barぐらいで調整して乗っていました。

走行距離2,000kmをちょっと超えたあたりのライドで、ふとリアタイヤのあたりを見てみると、シートポスト、シートステーのあたりに白い汁が飛び散っているじゃないですか。そっか、耐パンク白汁ことシーラントは、こうやってみえないところで仕事をするんだ、つまり走っている間に何かを踏んでパンクし、それをシーラントが勝手に埋めていた、と。

FORMULA PRO TLR S-LIGHTは、トレッド面が杉目状のスリットが入っています。そのスリットの中に、タイヤ消耗のインジケーターがあるのですが、やはりトラクションのかかるリアは杉目が消えかけ、ぎりぎりインジケーターが残っているかどうか、というところ。フロントのほうはまだまだ杉目状のスリットが残っています。

2,182km走行後のFORMULA PRO TUBELESS READY S-LIGHT (左:リア・右:フロント)

おそらく、前後のタイヤをローテーションすればまだまだ使えるのでしょうが、この後300km〜600kmのブルベを走ることを考えると、このままではやはり心許ない。というわけで、FORMULA PROは予備に回し、タイヤを新調することにしました。

なぜAGILEST TLR 30cを選んだか

今年の4月に東京ビッグサイトで行われたサイクルモードで現物を見てきました。回転方向の指定はなく、トレッドはスリック。それでいてモチッとした触感からグリップは良さそうに感じられ、TLRにして重量も十分に軽量。そして何より定価ベースでも比較的安価なので、これは試しやすいタイヤだな、と。
クリンチャーモデルから先に供給が始まっていたようですが、Panaracerブースにいたスタッフ曰く、ちょうどサイクルモードの前日あたりからチューブレスレディーモデルも共有が開始されたとのことで、以降主要なオンラインサイトで在庫のチェックをしていました。

決め手になったのは、やはり軽さと価格でしょうか。タイヤは海外ブランドのものを好んで使ってきましたが、28c以上で重量(260g〜270g)をクリアするものがなかなか見つからない…。特に28c以上のものは、最近のロード太タイヤ化の影響なのか、グラベル人気のせいなのか、ことごとく在庫がない。海外ブランドの国内正規品は値段が倍ぐらいするしなあ…、と悩んでいたときに、ちょうどAGILESTがリリースされたのでした。で、前述のサイクルモードで実物を見て、値段もかなり手頃だったので「ヨシ!」となったわけです。

んで、ぼちぼち国内のネットショップで在庫が出そろった頃に、最も安かったワールドサイクルさんで注文し、無事着弾しました。送料は無料で、2本で11,556 円。海外ブランドの国内正規品だと一本の値段だぁ。

なんか箱も海外ブランドのものっぽい
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AGILEST TLR 30cの実測重量

カタログ値では、30cは270gとなっていますが、さて、実測はどうでしょう。

一本目。なんと254g、カタログ値から-16g。

AGILEST TLRの実測重量 (1本目)
一本目の重量計測

二本目、こちらはほぼカタログ値通りの268g。カタログ値から上振れしないところはさすがの国内メーカー。

AGILEST TLRの実測重量 (2本目)
二本目の重量計測

これまで数多くのホイール・タイヤの組み合わせでチューブレスレディタイヤをインストールしてきましたが、装着については、至極簡単と行ってもよいレベル。全体がしなやかなので、片側のビードを入れるのも容易、もう片側のビードもタイヤレバー不要でした。もちろん手の力には個人差があると思うのですが、確実にリムセンターにビードを落とすように全周を入れていくと、最後は親指の付け根でぐっと押し込むことで嵌まりました。

ビードがリムにすんなり嵌まる=タイヤ自体がしなやかでやわらかいため、たいていその後ビード上げで苦労することが多いのですが、この工程もエアタンク式のポンプがあればサクッと上がりました。さすがにフロアポンプでは上がりませんでしたが。ちなみに個人的には「ビード上げに石けん水は使わない派」なのですが、それすら必要としないぐらい簡単なインストールでした。

360km走ってのインプレッション的なモノ

さて、やっと本題です。ブルベでの310km、リカバリーを含めた通勤ライドで50kmを走ってみての感想です。

結論から言うと、想像以上によかった。ブルベでは4.5Barで乗りましたが、極上の乗り心地。さすがにコンクリ舗装では手に衝撃を感じましたが、古めのアスファルトや荒れた路面で手に伝わる衝撃は明らかに柔らかく、角が取れている。それでいてコシがあるのか、信号ストップ後の再スタートでいきなりトルクをかけても腰砕けになることなく、「クンッ」と掛かってくれる感じがありました。

4.5Barでの登りも特に重さは感じず、パワーをかけてもリニアに反応してくれる感じがあり、とても低圧で走っているとは思えない感触。さすがに超軽量タイヤ+ポリエチレンチューブという組み合わせと比べると重いのだろうけど、常用しても全く問題ないレベルの反応でした。

タイヤが太いのだから当然、ダウンヒルでのグリップはよい。60kmぐらいの速度でバイクを倒しても、変な挙動がなくすごく素直に曲がってくれる。一瞬、ぐっと強めにブレーキングをしたコーナーがありましたが、それでもロックすることなくしっかりと路面を捉えていました。制動力の高いディスクブレーキとの相性は抜群によいような気がします。

これまでに乗ったタイヤとの比較では、HUTCHINSON FUSION 5 Galactikに近い感じかな。あれのタイヤを太くして、性能を転がり抵抗よりもグリップに性能を振った感じがします。

空気圧に関して、ブルベ後のリカバリー&通勤ライドで5Barまで上げてみました。すると、4.5Barの時と比べて、荒れた路面で感じるショックが明らかに強くなり乗り心地が低下。それと引き換えに転がりが軽くなったかと言えばそうでもなく、町中の坂でも4.5Barの時と比較して明らかな優位性を感じませんでした。

ぶっちゃけ、ヒルクライムでの感触は確認する必要はあるものの、転がりを犠牲にすれば4Barぐらいまで下げても問題なさそうな気がします。174cm・体重61kgの僕からすると、4〜4.8Barの間にスイートスポットがありそうです。ここまでのインプレだと、

  • ヒルクライム中心のライド:4.5~4.8Barぐらい
  • 平坦中心もしくはブルベなどの超長距離:4〜4.5Barぐらい

が適切なあたりかな、と感じています。もちろん、求める乗り心地と転がりは人によって変わるので、是非みなさんもいろいろと探ってみてください。

減圧ですが、4.5Barまで入れて15時間かけて300km走り、次の日の昼過ぎに整備をしたときに空気圧を測ったら4.1Barほどでした。機密性もなかなか優秀なんじゃないでしょうか。メンテ時 (4.1Barの状態)にタイヤ幅を実測(内径19mmのリムに装着)したら、28.1mmでした。

AGILEST TLR 30c・空気圧4.1Bar状態でのタイヤの実測幅
空気圧4.1Bar状態でのタイヤの実測幅

以上、簡単なわりにながくなってしまいましたが、AGILEST TLR 30cの初期インプレッションでした。

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